指導方針

by Daisuke Ikeda on 2021-04-02(金) // Posted in Lab

年度始めに、毎年、研究室の全体的な方針をキックオフセミナーで確認しています。 目指す人材像、テーマ選びを含む研究指導の方法や、おおまかな年間スケジュールなどを説明しています。 毎年少しずつ修正しています。

目指す人物像

自分の内面で起こった直感、感動などから目的を設定し、サブゴール(目標)を設定し、目的を達成できる人になってもらいたいと考えています。

  • システム1:ヒトになる前から進化してきた認知・思考システムで、直感、感動など何かの刺激に対し、無意識にほぼ自動的に起きるものです。
  • システム2:論理的な思考で、意識的な注意が必要です。通常、我々が思考と考えているのはこちらですが、日常的な様々な判断にはシステム1が大きな影響を持つことが分かっています。

システム1は、経験などに根差しており、帰納的な思考です。つまり、(既存の常識では)論理的に正しいとは限りません。逆に言えば、論理的に正しいことは、誰でも導くことができるものですが、システム1の認知は、その人のそれまでの経験に依存しているので、例えば、パロアルトの研究所でGUI付きのパソコンを見て、「これがパソコンの未来だ!」と誰でも思うわけではないのです。

「論理的に正しくない」ことを押しすすめる、ということは、別の前提を持つ新しい理論(新常識)を構築するということで、これは イノベーション と言われるものです。例えば、何かの問題は論理的に認識でき、例えば、地球規模の環境問題は誰でも認識しているでしょう。しかし、これだけ認識していても、あまり変化があるようには思えません。論理的な飛躍なしには解決は難しいように思えます。

イノベーションというと、それだけで難しそうですが、システム1で得られた目的に進む時の本質的な難しさは別にあります。つまり、従来存在しない事で、かつ、正しいとは限らない事に向かって進んでいくことができるかということです。過去にイノベーションを起こした人のドキュメンタリー番組などを見ると、最初に閃きを得たことは、常識からかけ離れているように見え、大勢に反対される場面がよくあります。そのような反対の中で、前に進めるかという問題です。

システム1は無意識かつ自動的ですので、本人が自発的に何かに取り組む必要があります。命令されて何かをやるという「管理」スタイルとは相容れません。自分で自分を「主導(リード)」する必要があり、そういことができる人材を育てたいと思っています。

システム1/2など、あまり聞かない言葉がでてきました。詳しくは以下のnoteを参考にしてください。 * ビジョンの定義(1/2):良い定義とは? * ビジョンの定義(2/2):ビジョン駆動型リーダーシップのビジョン

研究をよく知っている人向けには、ビジョンは仮説で、ミッションが具体的な方法になります。仮説を得るのは大変ですが、興味や社会的な情勢をもとに自分で研究テーマを考えることで、自分で仮説を作れるようにサポートします。

ゼミの実施形態の変遷

上述のような考えから、「ゼミに欠席する時には連絡は不要」というスタイルを2年ほど前に導入しました。自分の研究は自分で進めないといけないわけで、何か用事があって来れない時は、それはしょうがない時であって、わざわざ連絡する必要はないという考えからです。

また、今年度(令和2年度)は新型コロナウィルスの影響で、ほとんどの研究室活動をオンラインで実施しました。こうなると、一人で部屋にこもりがちになってよくないので、毎日の朝礼を実施しました。ただし、参加したい人だけすればよく、当然、欠席の連絡は不要です。

誰かに強制されずに、自分自身のために何かを実行するのは意外に大変です。そのため、この朝礼をキッカケにして、「今日はこれをします!」みたいに自分で宣言して「自分自身をリードするような機会」にしてもらいました。

現在、一応従来のような時間を決めて多人数で揃うゼミも残ってはいますが、毎日お昼ごろに「オフィスアワー」を設け、何か報告したい人、相談したい人はいつでも来てよいという形態にしています。もちろん、参加したい人だけでよいですし、参加する場合もしない場合も連絡は不要です。